ネット社会を生きる奥義 2006-06-19/2006-06-22 「ネット社会を生きる奥義」 羽生善治(前編)(1)  「Web2.0」の革命が、ネットの枠を越え、あらゆる世界を揺るがそうとしている 。インターネットの登場、そして、進化により、将棋の世界はどう変わったのか。そして 、「Web2.0」の時代に、各界のプロはどうすれば生き残ることができるのか。棋士 の羽生善治氏に聞いた。(6月19日発売号の『週刊東洋経済』:「Web2.0」特集 の特別版)   将棋界のアマチュア革命 ――インターネットが一般的に使われるようになって10年。将棋の世界は変化しました か。  まず、パソコンが出てきて、データベースを簡単に見られるようになりました。対戦相 手のデータを一覧で見て、どういう手で来るかを予想できるようになった。今では、なく てはならない存在です。  で、何が変わったかというと、ネット中継とかが始まって、対局を見られるようになっ た。以前は将棋会館に対局の進行を見に来て、夜遅く帰ることがありましたが、その必要 がなくなった。今は中継してくれる。しかも、控え室の模様まで「だれだれ四段はこの手 が有力だと言っている」とかまで入っている。  もう一つは、インターネット上の将棋道場ができたこと。これはすごく画期的なことな んです。今、若い世代はほとんどやっている。それまでは、将棋でも地域格差があった。 やはり都会にいる人が有利。強い相手もいっぱいいるし、情報もたくさんある。でも、イ ンターネットのおかげで、いつでも中継を見られるし、いつでも強い人と対戦できるよう になった。地域格差がかなり小さくなりました。  インターネットの将棋道場は1つだけではなく、いくつかあるのですが、そういう場所 が、技術の進歩を早めたというのは間違いないですね。今までは、プロ同士で研究すると いっても限られた一部の人たちでやっていた。ある意味、一部の人たちが囲い込むことに よって、プロのレベルが保たれていたところがあった。けれど、ネットが出てくると、そ こに境目がなくなりますから、どんどんそういう技術が外に流れていく。全体的にレベル が上がったということもありますし、序盤戦の作戦の進歩が早くなった。 ――羽生さんご自身もネットで対局されるのですか。  私もやったことがあります。対戦相手はわからない。ですけど、わかるときもあります 。プロ同士で初心者のふりをして隅っこでやっている人もいる。やけに険しい応酬が続い ているので、バレますけどね、すぐに(笑)。  そういう場所があるということがすごく大きい。今まではせいぜい公式戦で指すか、あ とは練習で2人とか4人とか6人とかで集まってやるといっても、限られていた。ネット によって、将棋を強くなろうと思ったときの条件がよくなった。 ――プロ同士が囲い込んでいたというのは、一門でという意味ですか。  プロ全体でということです。これまでは、棋譜や定跡はその世界に入らなければ分から なかった。すべては全然公開されていないことなんです。定跡というのはたくさんあって 、プロ同士の定跡というのは、当然ながらより専門的になるので、本に書いてあるのとは 別なんですね。私も四段になって、公式戦を戦っていく中で初めて身につけていけたので す。でも、今はそういうものは全部取っ払っていけます。それは格段の進歩なんです。 ――素人の方が、知らない間にプロの方と対戦して、格段の進歩を遂げることができるわ けですか。  ええ、たくさん対戦していると思いますよ。対戦だけではなく、見ることも調べること もできる。見ていて誰だかわからないけど、「えらい強い人だな」と思えば、その人の棋 譜は全部調べられます。要するに、公平になったということなんです。今まで才能はある けど機会がなかった、という人には非常にありがたい。  将棋の世界では、アマチュアの方ではよくある傾向ですけど、たとえば、地方に住んで いて、県の代表になった人たちは、その県の中ではもう誰も相手がいなくて、そこから進 歩できなかったんですよ。つまり周りに自分より強い人が誰もいないので、やる気持ちが あっても、将棋を指す場がない。でも、ネットができたから、今は自分よりも強い人と、 いつでもかなりの確率で対戦することができる。そこは画期的な進歩です。 「ネット社会を生きる奥義」 羽生善治(前編)(2) これから高速道路が、ドンドン渋滞する ――ブログが出てきて、われわれ出版業界の地位が相対的に低下するとか、プロをしのぐ アマチュアが出てくるという話があります。将棋でも奨励会に入らず、アマチュアですご い人が出てくる可能性はありますか。  将棋道場とかにほとんど行ったことがないのに、奨励会、プロの養成機関に入った子が いると聞いたことがあります。「生身の相手との将棋は違いますね」と言ったとか。駒を 並べるのがぎこちなかったとか、並べたことがなかったとか。そんなバカな、みたいな( 笑)。 ――将棋会のヒエラルキー自体は壊れていないのでしょうか?  あるところからはあまり変わっていないと思います。全体的な層は非常に厚くなりまし たけど、そういう人たちが全員八段になるかというと、そうはならない。ですが、機会の 不平等はなくなったので、自分なりに頑張れば、結果としてチャンスはある。 ――突然、アマチュアの方で羽生さんを倒す人が出てくるということはありえますでしょ うか。  仮にそういう事態があるとして、そういうことになる前にその人が誰かは見当が付けら れる。匿名でやっていても。明らかに以前とは違っているという実感はありますが、ネッ トだけでプロのレベルにまでなるのは難しいと思います。 ――優秀なアマチュアの方は自分が強いことが分かるので、とりあえず奨励会に入るとい うことになるのですね。  ただ、奨励会に入る前に見極めができる、ということはあります。奨励会に入る前に「 俺はこれくらいだ」というのがわかるというのはあります。普通、小学生くらいは奨励会 に入るまでは、(自分のレベルが)分からない。そこは閉ざされた世界ですから。井の中 の蛙で、入ってみたら全然かなわなかったということもよくある。そこが開かれていれば 、イケそうとか、ムリそうとかわかりますよね。そういう意味では、(プロを)目指す人 たちが増えるのかは、ちょっとクエスチョンマーク。こういうのって錯覚で入ってくるこ とが多い。錯覚しないで、ハードルの高さを知っちゃうと、もうやめようと思うことはあ りますよ。こんなに大変です、というのが事前にわかっちゃうということなので。 ――将棋という産業にとって本当によいことか分かりませんね。  そうですね(笑)。でも、今まで地方でチャンスがなかった人にもチャンスがあればい いことだとは思いますけど。 ――強くなるためのインフラが整った。その先はどうなるのでしょう。  そこが、これから先のテーマだと思います。今までは環境がよくなかった人たちも、一 定のところまでたどり着けるようになった。ある区間は最短コースで、遠回りも迂回もし ないでたどり着ける高速道路が整った。でも、みんなが高速道路に乗り始めると、速く走 行できていたのがだんだん渋滞します。これから先はそれがどんどん起こり始める。  でも、世間の評価とは全部相対的なものですから、そこから抜け出すのに、インターネ ットとかそういうものとは違うアプローチの仕方をしないといけない。そこを差別化して 一歩先を出るのは難しくなっている。それはある意味、昔も今も変わっていない点。いや 、むしろ、今のほうが厳しくなった。競争率も高いし、層も厚い。 ――インターネットが平等な環境を整えた世界の中で、どう差別化したらよいのでしょう か。  たくさん情報を集めるとか、ネットで実践をたくさん積むといったことはみんなやって いることですから。そこから差をつけるにはどうしたらいいか、とまた違うことを考えな いといけない。 ――「みんながやることをやらない」というのはどうでしょうか。  やらない人もいますよ。ゴーイングマイウェイで俺は俺の道を行く人もいます。ただ、 今の10代の子やそれ以下の子にとって、そういう道はきわめて難しいと思います。片方 は高速道路でビュンビュンと突っ走って行けるのに、「一般道で行け」って言われたら、 釈然としないですよね。「俺もこっちに乗りたいよ」って思うじゃないですか。  昔だったら、みんな一般道を走っていたから、遠回りで行くのも「そういうものだ」と 思えるけど、片方が上でビュンビュン行かれたら、「20キロ先が渋滞しているからそっ ちの道に行かないほうがいい」って言われても、その道は選べないですよ。とりあえず、 行けるところまで行っておこうと思うじゃないですか。 ――次に差別化するにはどうすればいいのでしょう。  簡単に言うと、どうやって将棋を強くなるのかは、いろんな方法があるんです。たとえ ば、実践を指すとか、詰め将棋を指すとか、次の一手を考える問題をするとか。でも、ど のやり方をやればこのくらいのレベルになります、というのはわからない。ただ、みんな 闇雲にいくつかを積み重ねてきた結果、強くなってきた。それは全然論理的じゃない。  高速道路はどういう意味かというと、「その区間までは、最短コースで突っ走れますよ 」ということ。「こういうやり方をすれば、最短コースで、まったく遠回りも迂回もしな いでたどり着けますよ」ということ。みんながドンドン、ドンドン(高速道路に)乗り始 めると、速く進めていたのがだんだん渋滞しますから。これから先はそれがドンドン起こ り始める。 「ネット社会を生きる奥義」 羽生善治(前編)(3) 最後に頼るのは"勘" ――「Web2.0」という名の新しい高速道路ができる?  重要なことは、量が質に転化するかどうか。いま将棋が上達するための情報は莫大な量 がある。でも、情報は情報で単に情報でしかない。それ自体に意味はまったくない。でも 、情報1個が100個になり、1000個、1万個、10万個になったときに、全然違っ たことが起こるのか。ある瞬間に、10年とか15年かけて養っていた判断力が身につい てしまうかもしれない。ただ、それは全然、見えていない。 ――何が必要でしょうか。  整理する力とか、存在みたいなもの。将棋にはすごくたくさんの定跡や戦型・戦法があ るのですが、今まではファッションみたいに、今年は赤がはやるとか、オレンジがはやる というのがあった。で、今年は赤がはやりそうだと思えば、赤に対する対策を徹底的に立 てればなんとか追いついていけた。ですが、今は5色とか6色の流行が続いている。そう すると、全部をフォローするのは事実上不可能です。  今の最先端の将棋を説明できる人は一人もいないはずです。この形だったら説明できる という人はいますけど、じゃあ、あれもこれもこの形も説明してくださいと言ったら、誰 もできない。それくらい細分化されている。逆に言うと、そこで取捨選択、整理整頓をし ないと、どうにもこうにも前へ進めない。どれも中途半端な結果になってしまう。 ――羽生さんが達成された、七冠みたいなことができなくなるということでしょうか。  ジャンルが違うと思っていただくといいんです。つまり、純文学があったり、推理小説 があったりと。全部、最近出た本を全部フォローしてくださいといったら無理ですね。 ――フォローしていない戦法でこられると、多少実力差があっても逆転が起きるわけです か。  そうですね。大まかに分けると2通りあるのですが、スペシャリスト型で、もうこの形 しかやらないという人は、その形だと誰よりも詳しい。対戦する人は、その人がこの形で 来るということが分かっていますから、それだけに対して対策を立ててくる。  私もそうですけど、最近多いのは、いろんな形をするオールラウンドプレイヤー。そう すると、「これもあるし、これもある」というふうに、どれでくるか対戦相手も分からな いですから。でも、全部それぞれ進歩しているので、時間を振り分けてどこまでフォロー するか、非常に難しくなっている。将棋は、選択肢がたくさんあったほうが戦いを有利に 進めやすいという利点はあるのですが、あまり幅を広げすぎると全部フォローするのが難 しくなる。もちろん、時間をたくさん費やして考えるのも大事なことですが、それをどこ に費やすかもすごく大事ですね。 ――羽生さんは、どうやって選ばれているのですか?  勘です。勘ですから、当たらないことも多い。それでも、この形を勉強するならこの人 の棋譜を見ればいい、というのがある。そういうのを見つけ出すことがすごく大事。検索 してオーソリティ見つける。たくさんの人が見たということよりも、信憑性の問題。この 人のだったら間違いない、というのが見極められるか否か。もう最終的にはそこに尽きて しまう。たくさんある中で、本当の真贋を見分ける。 ――信頼できる人を見抜く心眼ということですか。  逆に言うと、そういうのが見抜ける人は重宝がられるでしょうね。 (後編に続く) 「ネット社会を生きる奥義」 羽生善治(後編)(1) 「続ける」という才能    ――今、プロ棋士は受難の時を迎えているのでしょうか。出版業ではブログから出てく るアマチュアがプロを脅かすことも出てくるように思われますが。  「ただプロ」というだけではあまり価値はなくなると思います。プロのライセンスを取 りました、四段になりましたというときに、じゃあそれで一生安泰かというと全然そんな ことはない。それはどんどん後ろから来る人たちがたくさんいるわけですし、そういう人 たちの環境は恵まれているのは分かっているわけです。その中でなんとかやっていくしか ないという意味での大変さはありますが、それが受難だとは私は思わない。 ――かつては四段を取れば、引退して地方に帰り、将棋を教えれば安泰だったという人生 設計があったと思うのですが。  それはある意味、正当な競争が始まったということです。それまではプロはプロだけの 間で技術を囲い込んでいたわけですから。それは他の人たちから見れば公平じゃない。最 新の棋譜とか情報はプロの人たちだけで共有するわけですから、(アマチュアの人は)実 力の差もあるうえに、情報の差もつけられて勝負しなければいけない。そういうふうに、 ハンデを背負って勝負しなければいけないということは、今はなくなった。 ――高速道路ができても羽生さんを倒す人間がどんどん現れているわけではない。  そこは走っている人は車ではなく、人間ですから。  そこに一つのカギがあると思っています。つまり、猛スピードで突っ走ってきた、と。 そのとき、その瞬間は非常に充実感もあるし、自信も持っている。しかし、あるところか らニッチもサッチも一歩も前に行かなくなる。でも、後ろからドンドン来る。そこで前と 同じ気持ちで、同じテンションで、同じ集中力で、それを続けることができるかどうか。 それが大きな問題なのです。  一般道でゆっくりだけど確実に進んだほうが、長い目で見たら近道かもしれない、とい うことが確かにあるかもしれない。でも、最初にそんな一般道を走るのは事実上難しい。 よほど性根が座っているというか、浮世離れしている感覚じゃないと、その道は選びづら いですよね。 ――続けられること自体が才能ということですね。  そうです。つまり、環境が一緒になると最後はそういうことになる。 ――高速道路は差別化にならないわけですね。  そうですね。その点はある程度やる気があって、一生懸命やっている人たちであれば、 必ず通ってくるわけですから。 ――生の人間としての精神力とか意欲とか、才能が全部さらけ出される怖い世界ですね。  そうなんです。だから、そういうのがいいのかと思うときはあるのですが、もうそうな りつつあるということなので。 「ネット社会を生きる奥義」 羽生善治(後編)(2) はてなを訪れて感じたこと ――羽生さんご自身が天才少年でした。最近はフィギアスケートで15歳のチャンピオン が出るなど、スポーツの世界も低年齢化しています。羽生さんは、将棋もより低年齢化が 進むとお考えですか。  低年齢化はしていくと思います。どこまで下がるかは分かりませんが、今より下がると は思っています。プロの四段になるのはもっと低年齢でもおかしくない。小学校高学年か ら中学校入ったばっかりというのはそれほどおかしくないと思います。今は中学生でプロ になる人はほとんどいないわけですが、そういうやり方がきちんと確立されたら、出てき てもおかしくない。 ――今までよりも高年齢のプロが出てくるという可能性もありますか。  そういう可能性ももちろんある。30代後半とか40代になってからも環境さえ整えば 強くなる可能性がある。そういう人たちにもチャンスを上げるというのは非常に大事な要 素です。 ――低年齢化が進むと、「30代」と言われるピークも若くなっていくと思われますか。  将棋というものはルールは変わっていないんですけど、競技の質がどうなるか。もう少 し説明すると、今まで大体120手くらいで将棋は終わることになっていたのですが、今 は、110手とか100手とかちょっと短めになってきた。  そのうち、将棋において、知識とか研究が占める割合が大きくなると、距離が変わって くるということなんです。ルールは変わっていないんだけど、今まで200メートル走だ ったものが実は100メートル走になっていたというような。たとえば、水泳でいきなり バサロで入って、浮かび上がったところからスタートだとなれば、ルールは変わっていな いけど競技の質は変わりますよね。それと同じことなんです。その距離が短くなればなる ほど、若い人たちには有利になる。 ――若い人が増えると、燃え尽き症候群とか問題が出てくる。  そうですね。今、将棋の世界では三段から四段になるのが一番厳しい。ここを抜けると いうのがすごく大変。だから、三段の人はすごく将棋の勉強をしている。四段になるとち ょっと気が緩むという傾向がある。そこでホッとする。そこで給料も出るし、突然待遇も 変わる。でも、ここからが勝負なんです。 ――将棋の世界で決定権を持った方が上の世代にいて、新世代と旧世代の将棋に対する認 識ギャップが大きくなってというのはありませんか。  将棋の世界というのは自営業者の集まりみたいなものなんです。所属している意識はあ るんですけど、ピラミッド型の組織じゃない。だから、結構もめるときはもめちゃうんで す。たぶん、人事権がないのは大きい。「ちょっと九州行って来い」とかないですから( 笑)。 ――新旧世代の戦いが将棋以外で出てくるというのはないですか。ルールを決めるのが守 旧派で若い人に不利にルールを変えるとか。  昔と比べると、持ち時間というのは、全体としてはどんどん短くなっているんですよ。 でも、それは世代間の問題というよりはむしろ、外的な要素。対局の数が増えてきたこと と、インターネット中継が始まって夜中の1時、2時までそれを見ている人がいるという こと。あとは時代の流れですね。長い時間を費やしてやることに本当に価値があるか、と 。 ――時間が短くなると若い人に有利になるのですか。  有利とは限らないです。かえって、長いほうが体力勝負になるから若い人が有利という 面もある。そこは結構デリケート。 ――梅田望夫さん(ミューズ・アソシエイツ社長、『ウェブ進化論』の著者)とお知り合 いとのことですが、梅田さんが取締役を務めている、はてなにも行かれたことがあります か。  行っています。活気があるところですよね。どう言ったらいいんでしょうか。こういう 言い方が適切かどうかは分からないですけど、奨励会の人たちが研究してすごく画期的な 一手を生み出していくような雰囲気を感じました。将棋の世界も、結構そういうところが あって、プロではなくもっと若い人たちから出たものが認められて、それが結構大きな流 行とか主流の戦法になったりするんです。 ――それはちゃんとした競争があって、切磋琢磨しているとそうなるのでしょうか。  たぶん、私は思うんですけど、やっぱり将棋の世界でも、トップに近い人はやはり「大 きなリスクをとって画期的なアイデアを」というのはやりにくいんですよ。でも、若い人 たちにはそれはないですから。 ――羽生さんもびっくりするような手が出てくることが。  ここ10年くらいはかなり画期的な作戦はいくつも出ました。「藤井システム」、「中 座飛車」、「一手損角換わり」というもがそうです。これは昔やったら破門されています から。内弟子の時代だとこれが王道の将棋だとかいうのがありますから、そんな手をやっ たら邪道、異筋、異端者扱いです。破門されることはないですけど、少なくとも叱責され ることは間違いない。「そんなのやっちゃいかん」と。 ――インターネットの世界と似ていますね。  そうですね。著作権がないからマネし放題です。特許とかとったらすごいことになるん ですが。