開講記念羽生善治四冠特別講演 2005-10-03  田中寅彦九段がホスト、この10月から開講する女流棋士MONDAYレッスンの塾長 である藤森奈津子女流三段が紹介され当講演の司会をつとめた。主役:羽生四冠は濃紺の スーツに真っ白なシャツと黄色いネクタイというイデタチ。残念ながら写真はNGという ことで撮影はプロの方だけ。  「私が子供の頃、このように将棋を勉強した!」 というお題目で講演は約20分くら いお話されただろうか。覚えている限り講演内容を箇条書きしてみる。 1.羽生家は埼玉県所沢市から東京都八王子に引越し、将棋の”し”の字もない家庭だっ た 2.同級生の高木君との遊びのひとつで将棋と出会った 3.最初ははさみ将棋やまわり将棋だった 4.本将棋は最初は負けてばかりだったが1ヶ月したら自分ばかり勝つようになった 5.毎週土曜日に八王子クラブという将棋道場に通うようになったが、席主が最初は15 級からにしてくれた 6.新聞の将棋欄で次の一手を考えることで力をつけた。最初は10回のうち1回あたれ ばいい方だった 7.まずは戦型や囲いを覚えるのは大事。 8.最初は駒をとられたくないものだが、大局観ができてくれば駒を渡すことができるよ うになる 9.誰でも間違いはある。間違いを恐れないことも大事だし、また間違っても一息ついて 落ち着いて指すことが大事 10.初段以上になったら覚えている範囲でも棋譜をつけることが進歩の近道 などなど・・・。  その後質問コーナーとなった。 質問1:将棋を始めてから今までに将棋がいやになったことはありますか? 回答1:うーん、ないですね。ただ、自分が対戦する相手はプロ棋士で自分がやってほし くない”イヤ”な手ばかり指されるということはありますね(笑)それはそれで面白いと いうと語弊がありますがいやになったことはないですね 質問2:場違いかもしれませんが佐藤棋聖のファンです。一言で羽生四冠と佐藤棋聖との 違いはどういうところでしょう? 回答2:佐藤さんとはずっと顔をあわせていましたね。佐藤さんは読みの深さでは棋界ナ ンバー1と言えるんではないでしょうか?そこまで読んでいるのかとか、そこまで掘り下 げているのかとは感想戦でよく思います。また守りを固めるというよりは斬り合いに行く 傾向の棋風というんでしょうか?そういう攻めの比重が非常に高いと思います。 質問3:羽生先生の得意戦法を教えてください 回答3:自分にはこれと言った得意戦法がないんです。そのとき興味をもった戦法をやる ことが多いですね。 質問4:うちの子は勉強をせずに将棋ばかりしており困っています。何とか両立できない かと思っていますが、羽生さんの小学校・中学校時代の成績はいかがでしたでしょうか? 回答4:自分はそんなにできる子ではなく中くらいでした。ただ算数や数学は得意でした 。一転豪華主義というんでしょうか(笑)ただ、将棋も勉強も強要されてやるのではなく 本人が興味をもってやれば伸びていくと思います。 質問5:将棋史の中で戦ってみたい棋士に升田幸三先生をあげられていましたが、升田先 生の将棋をはどの点が凄いところでしょうか? 回答5:升田先生の将棋は実は最近になって見始めたのですが、棋譜をみると現代でも通 用する部分がたくさんあるのがわかりました。現代将棋は相撲でいうとすぐがっぷりよつ になる前に戦うようなスピード感あふれる展開なんですが、40〜50年前にそういう将 棋をしているんですね。 質問6:講演の中で”間違い”のお話がありましたが、われわれは仕事でも将棋でも間違 いだらけですが、立ち直るコツなど教えていただけますか? 回答6:自分が対局をして”完璧だ”と思ったことはほとんどありません。どこかしら「 こうすればよかった」と思うところがあります。失敗したときはよく局面が紛れているの で、失敗したことにくよくよ後悔せずじっくり腰を落ち着けて、お茶でも一杯飲んで(笑 )、考えることが大事だと思います。